岡谷蚕糸博物館へ、敬愛するきものジャーナリスト、中谷比佐子先生がプロデュースした染色三人展を見に行ってきました。
日本茜と日本紫紺の色の美しいこと。
ポスターを見たときから、本物の染色と作品に触れたい、と楽しみにしていました。
染色家の方が、それぞれの技法で染めた(あるいは手描きや爪搔本綴)帯や着物の数々が展示されていて、圧倒的な美しさに、いつまでもその空間にとどまりたい気持ちになりました。
帰宅してから、作品の写真を一枚も撮っていないことに気づきました。
写真を撮るアイディアが浮かばないほど、のめり込んでいたようです。
もしも映していたとしても、その美しさの1/100もとどめられなかったはずなので、良しとします。
本物を見て触って、話を聞いて、かなり目が肥えてしまったように思います。
京都美山で日本茜を生産されている渡部康子氏の話も興味深かったです。
農作物が野生動物の被害にあう中、ならば元々農業に不要なものとして刈っていたもので何かできないか?というところから、日本茜栽培を始めたそうです。
日本茜を野生動物が食べないか、といえば必ずしもそうではないけれど、茎や葉っぱのわずかなトゲトゲを嫌がるので、被害率は低いとか。
貴重な種をおすそ分けいただきました。
発芽率が低いそうで、年単位で発芽を待ってみて、とアドバイスいただきました。
併設の宮坂製糸所では実際に繭から糸を取る工程や、成長中のお蚕さんを見ることができます。
「かわいい」「かわいい」と言っていたら、奥に控えていた何百頭(お蚕さんは家畜なので頭で数えるのです)のお蚕さんへ桑の葉をあげさせてくださり、触れ合いを楽しみました。
絹製品の素晴らしさ、蚕糸産業がもたらす日本文化や農業、日本社会全体への影響をひしひしと感じ始めた昨今ですが、この可愛いお蚕さんの命を頂戴している、という点が、ペスカタリアンの私にはまだ心の落ち着かせどころが定まっていないのが正直なところです。
今は、命を懸けて糸を提供してくれたお蚕さんに感謝して、大切にまといたいと思っています。
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